どっちが好きなの?





ある日の昼下がり。

お茶をしながら、そういえば、と思い出したようにキールが尋ねた。

「最初、セレスティアから来てすぐの頃は向こうの服を着てただろう。最近着てないな。」

「はいな!だってインフェリアの服、ファラがプレゼント!着ないのは勿体無いな」

キールの言葉に、メルディが元気よく答える。

今着ているのは、ファラのお下がり。

よっぽど気に入っているのか、セレスティアで生活するようになってからも常に着ている。

「だってかわいいよぅ。ファラも良く似合ってるって褒めてくれるもん」

えへへと笑うメルディに、キールは「確かに可愛いけど・・・」と心の中だけで呟いた。

首の隠れ具合とか、手が隠れるくらい長い袖とか、ころころと転がりそうな雰囲気とか。

確かに一部の嗜好の持ち主ならころっといきそうだ。

「・・・ってその手の嗜好ってなんだよ」

「どしたキール?誰に言ってるの?」

「いや、こっちの話。・・・それにしても、セレスティアの服だって、最初は着ていただろう。もう着ないのか?」

旅をしているときも、ほとんど着ていなかった。

もちろん、セレスティア人とばれないようにするため・・・という意味もあったが、セレスティアに来てからも着ていなかった気がする。

「あー。あれはねぇ。ちょっとじじょーがあったのよう・・・」

「事情?」

メルディが言うことには。

インフェリアに来ていった服は、セレスティアでもあまり着ない服・・・普段着ではなかったそうだ。

だから、セレスティアにきても着にくかったらしい。

「そうなのか」

「だって、真っ白の、フリフリの、スケスケよ?さすがのメルディも、ちょっとなー」

確かに。

言われて思い出し、キールは思わず顔を赤くする。

真っ白のドレス。

体の線がはっきりと出るそれは、メルディの華奢な体を強調するようで。

「じゃあ何でわざわざそんな服を着てきたんだ・・・」

「ガレノスがしょーぶふく着ていけって〜」

「・・・っ!?しょ・・・」

メルディの言葉に、キールは思わずお茶を吐いてしまう。

「しょしょしょ勝負服って・・・っ!」

どこまで分かって言ってるんだ、と思うが、尋ねづらい。

分かっていても嫌だが、分かってなかったらそれもそれでどうかなあと思ってしまう。

「でもすぐにリッドたちに会えたしな!勝負しなくて良くなったから着なかったのよう〜」

「・・・そうか」

勝負しなくてすんでよかった。

「それに、あの服だとキールが目を合わせてくれない」

「・・・それは、こっちにも事情があるんだ」

でも、あの服を着たメルディは綺麗だ。

着ないのも勿体無いような気がする。

・・・なんて思っていたら、その気持ちが伝わってしまったようで。

「キールは、あっちの方がいいか?」

首を傾げ、尋ねられた。

「え・・・」

「インフェリアとセレスティア、どっちの服が好き?」

「え・・・ええと」

可愛いインフェリアの服と、綺麗なセレスティアの服。

どっちのメルディがいいか、なんて。

「どっち?」



どっちを選んだかは、二人しか知らない。


〜END〜


徒然より移転。あややの歌から。
私は断然セクシー派です。


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