分かりにくい
「馬鹿かお前!着替えてとっとと帰れ!」
喫茶珊瑚礁でのバイト中。
所用で遅れて店に入った佐伯に有無を言わさず店の奥に連れて行かれ、そこで突然怒鳴られる。
いつもより動きが緩慢だったものの、ミスはなかった今日。
どうして怒られるのかわからず、思わず「どうして!?」と言い返した。
「佐伯くんにそんな風に怒鳴られるようなことしてないよ!?」
「煩いな。早く帰れって言ったろ!だいたい朝から調子悪いならバイトに出るな」
ぱしん、と押し付けられたのはアイスノンとポカリスエット。
ぽかんとする間に、佐伯はさっさと店に出る準備を完了する。
「風邪治したら、倍働いてもらうからな。今日はもう寝ろ」
言い捨てて、店へ通じる扉をばたりと閉めた。
残された少女は1人、ただ呆然と立ち尽くす。
今日は朝から調子が悪かった。
けれど、誰にも気づかれていないと思っていたのに。
「馬鹿瑛・・・」
思わず笑いが零れた。
貴方の優しさ、分かりにくいんだよ。もう。
真咲にしようか瑛にしようか散々迷って瑛で。
真咲先輩だったら無言で車に乗せて家に強制送還しそう。