最初に好きになったのは・・・



   太陽のような




「・・・ん?どうした?」

じっと横顔を眺めていると、視線に気付いたのか、そう言って先輩が振り向いた。

何でもないです、と私は慌てて視線を逸らす。

「何でもないって・・・気になるだろう」

「もう!いいじゃないですか!あっ、それよりお客さんですよ先輩!どうぞ!」

「どうぞって・・・しょうがねえなあ。いらっしゃいませー!」

私の様子に苦笑しながらも、先輩はそうお客さんの方に歩いていく。

私は途中だったブーケ製作に戻りつつ、こっそり先輩を盗み見た。



最初に惹かれたところはどこか、と訊かれた。

はるひはギターを弾いている姿だと。

千代美ちゃんは理想の高さだと。

私は・・・と考えて、思考が止まってしまった。



彼が実は繊細で、とても気が利く人だということを知っている。

その手が大きくて暖かいことも。

背伸びせずに一緒にいて楽しい人だということも。

けれど、一番最初に惹かれたところって言われて、どれも違うような気がした。

どれも、先輩には欠かせない、先輩を形づくる大事な部分だけれど。

けれど私は、先輩のそんな部分に気がつくより先に、惹かれていた様な気がする。

でも、それは、どこに?



「手が止まってるわよ?」

声をかけられて、はたと私は振り向いた。

声の主は、有沢先輩。私の、アンネリーの、大大大先輩。

「ああいうところ、さすがね」

「え?」

「真咲君。相変わらず、一番人気だわ」

言われて、もう一度先輩の方を見た。

先輩が接客している相手は、この店の常連のおばあちゃん。

先輩の事をすごく気に入っていて、いつも先輩にお願いしに来るのだ。

おばあちゃんのことを迎える先輩の顔は、いつもすごく優しい。

「花のことに関しては絶対に真咲君より私のほうが上だし、アレンジメントに関しては貴方の方が彼よりセンスいいのに。

 でも、あの笑顔には負けるわね。どうりで常連さんたちがみんな真咲君を指名するはずだわ」

「先輩、お客さんのこと、すっごくあたたかい笑顔で迎えてますもんね」

有沢先輩の言葉に、頷く。

視線の先には、笑顔でおばあちゃんに手を振っている先輩の姿があった。

ぽかぽかと、見ている人の心を暖かくするような、お日様みたいな笑顔。

「・・・あ」

思わず私まで笑顔になって見ていて、急に、気付いた。

「どうしたの?」

「いえ!何でもないです!続き、頑張ります!」

急に声を上げた私に不思議そうに尋ねる有沢先輩に、そう首を振って、私は先輩から目を逸らす。

有沢先輩は不思議そうにしながらも、奥から店長に呼ばれてその場を離れていった。



・・・わかった。気付いてしまった。



「ブーケ、頑張ってるか?いつものおばあちゃんから、お菓子もらったぞ。はい、お裾分けな」

そう言って飴玉を手渡す先輩を、私は見上げる。

あたたかい、笑顔。

私は、この笑顔が。

この、お日様みたいな笑顔が。

「先輩」

「ん?どうした?」

「・・・ううん。飴、ありがとうございます」

言うと、先輩はにっこりと笑った。





最初に好きになったのは、その、お日様みたいな笑顔。

太陽みたいな貴方を、好きになったの。







先輩=太陽という方式が離れなくなりました。
本当はもっと短い内容にしたかったけど、説明不足になりそうで。
アンネリー書けて嬉しかった!次はシリアスで書く!


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