解よりも美しい




「数学の解は、この世で一番美しい。それが難題であればあるほど、答えは簡潔で美しいのだ」

僕の尊敬する人はそう言い。

僕はずっと、彼の言うとおりだと思っていた。




「あら零一くん久しぶり。格なら二階よ」

機嫌のよさそうな母の声が聞こえ、僕は思わず姿勢を正す。

零一兄さんは、僕の従兄弟で、現在ははばたき学園で教鞭をとっている。

彼の難題に対する解はいつも簡潔で美しく、僕は尊敬していた。

本当ならすぐに下に下りたいところだが、何しろ今僕は数学の難題と戦っているところだ。

途中放棄は出来ない。

だから、階段を上る足音が聞こえ、扉をノックする音が聞こえても、僕は机に向かっていた。

「・・・なかなかに手強そうな問題だな」

部屋に入ってきた零一兄さんは、僕の手元を一目見るなりそう言った。

さすが、一目見るだけで分かってしまうなんて。

「まあね。でも、難題だからこそ絶対に打ち勝つぞと言う気持ちになるよ。絶対に美しい解を導き出すぞってね」

だって数学の解はこの世で一番美しいんだから。そうでしょう?

けれど、いつもの彼の台詞をそう返すと、零一兄さんは、ふ、と苦笑したように見えた。

「・・・そう言ったこともあったか」

「零一兄さん?」

様子が変だ。どうしたんだろう。

僕がいぶかしむと、彼は僕を見、呟くように言った。

「数学の解より美しいものも、この世にはあるということだ」

彼がそんな事を言うなんて。

しばらくは信じられず、呆然とした。

数学の解より美しいもの?

それは、僕の好きな星だろうか。でも、彼にとっては数学が何より一番だったはずなのに。

けれどそれが何かを彼は告げようとはせず、僕も聞かぬまま、彼は僕の家を後にした。




そして、僕は不本意にも羽ヶ崎高校に通うことになり。

彼女に会って。

ようやく、彼の言葉の意味を知る。








一応1は氷室EDで2は氷上というストーリーでお願いします。
氷室っちにとって1の主人公が数学よりも興味深いものであり、氷上君にとっては2の主人公が最も美しい相手と言うことです。
だらだらと長い説明を書くのが微妙なので、最後はあっさり終わらせてしまいました・・・。


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