見つけた。



夕焼け色に染まった海。

泳ぐでもなく、波乗りをするでもなく、ただじっと彼はそこに佇んでいた。



    側にいて



高校の同窓会。

最初は「行かない」と言ってたくせに、私が行くと知って、悩んだ挙句出席することになった。

久しぶりに会う友達。先生達。

私にとっては楽しい時間だったけれど、瑛には違ったみたいだった。

張り付いたような作った笑顔に、上滑りする丁寧な言葉。

別に昔に戻る必要はないのに。

気になって途中で声をかけたけれど、大丈夫だって笑って。

その後、私もつい久しぶりに会った友達に気を取られてしまっていた。

そして、私がふと気付いた時には、もう瑛は会場にはいなかった。




「瑛。探したよ?」

呼びかけても振り向かない。

「瑛」

もう一度呼びかける。それでも彼は海から上がろうとはしなかった。

私に向けられた背中が、あまりにも寂しい。

―――浜で1人で泣くような子だったんだよ。

いつかのマスターの言葉が蘇る。

「もうっ・・・!」

同窓会のためにと買った靴をその場に脱ぎ捨てた。

冬の、それも夕方の海の水は冷たく、私を阻んでるみたいだ。

まるで、今の瑛の心を表しているようで、負けるものかと思った。

海水に濡れ重みを増し、足にまとわりつくスカートに苛立ちながら、瑛に近付く。

「瑛!」

さっきより近付いた声に、気がついたらしい。

彼はようやく振り向き、ぎょっとした。

「馬鹿・・・!何してんだよお前!今、何月だと・・・!」

「それはこっちの台詞でしょ!」

こんな冷たい海に、1人で一体何時間いたの。

そんな、泣きそうな顔をして。

側にいて欲しいって、言ったくせに。

「どうしてそんな顔をしているのか、分からないけれど」

静かな海。

歩くたび、バシャバシャと波が音を立てた。

「私が好きな人は、意地っ張りで、我侭で」

瑛も私のほうへ近づいてくる。

あと少しだ。

「意地悪で、素直じゃなくて、すぐに怒って」

冷たい。

体が動かなくなりそう、ももう少しで届くのに。

「でも本当はすごく優しい」

あと一息。

手を伸ばせば・・・。

「そんな、本当の瑛を、見失わないで」

「・・・あかり」

・・・ああ、捕まえた。

「やっと捕まえた。探したんだよ」

迷子の子どもみたいな顔をした彼を、ぎゅっと抱きしめる。

思ったとおり、長時間海の中にいた彼の体は冷たかった。

「・・・もう吹っ切れたと思ったのに、あの頃とまるで変わってないと思ったんだ」

「そんな簡単に、人は変われないよ、瑛」

「そんな自分に嫌気がさして・・・お前は他の男と楽しそうだし」

「自信家の癖に。もっと、自惚れてよ」

お互い、冷え切った体のはずなのに。

抱きしめた彼の体は温かくて、安心した。

「側にいるって、言ったじゃない」

「・・・ごめん」

いつになく素直な彼の言葉に、苦笑する。

「悪いと思うなら早く私を海から連れて帰って。風邪引いちゃうじゃない!」

そう言った私を、お姫様のように抱え上げて。

「オッケー」と、ようやく、瑛は笑った。




「もう、風邪引いたら本当に瑛のせいだからね!」

「俺のせいって・・・って、ワンピースで普通、冬の海に入るか!?」

「だって瑛が振り向いてくれないんだもん!責任とってもらうからね!」

「責任って・・・!お前意味わかって・・・って・・・。はー」

「何?」

「分かった。お前が寝込んだら、添い寝して看病してやる」




ずっと貴方の側にいるから。

ずっと、側にいてね?




EDを見た勢いで。
夕焼けの海で抱き合う、ずぶ濡れの主人公と瑛という絵が見たかったの。


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