一番最後で、一番最初





紅白歌合戦も終盤に差し掛かると、いよいよ今年も終わりだなあという気がする。

隣でうとうとし始めた遊くんに思わず笑みを浮かべていると、聞きなれた着信音が響いた。

こんな時間に、いったい誰だろう?

思わず首をかしげながら携帯電話を見やると、そこには真咲先輩の名前。

まさか急ぎの連絡かと慌てて電話に出た。



「真咲先輩!どうしたんですか?」

「おー。相変わらず元気だな〜」



勢いよく出たのが可笑しかったのか、電話の向こうは笑っているような気配。

そういえば挨拶もせずに出ちゃった!

恥ずかしくなってしばらくの間黙り込んでしまった。



「もしかして凹んでるだろ?元気がいいっていうのは褒め言葉だって」

「うぅ〜。だって笑ってたじゃないですか〜」

「気のせい気のせい」

「絶対気のせいじゃないですもん!」



先輩の意地悪!と言うと、向こうからは大きな笑い声が聞こえた。

ああーぜったい楽しんでる・・・。

思わずふくれると、向こうから「ふくれるなって」という声がかかった。

・・・もしかして見えてるのかな?



「・・・で、何かあったんですか?バイトの連絡ですか?」

私が尋ねると、そういうわけじゃないんだけど、と先輩が言った。

「別に用事ってわけじゃなくて、何してるのかなーと思ってな。こっちは実家に帰ってないから暇なんだよ」

「えええ退屈しのぎですか!こっちは今紅白見てます」

「ああー、定番だよな。今年は赤だろ」

「ですよね!赤が勝ちますよー。多分」



受話器の向こうからも、かすかに歌声が聞こえてくる。

同じ番組を見てるんだ、と思うと、何だか嬉しかった。

何でかな・・・。



そのまま、いつものデートみたいに雑談をしているうちに、テレビの中では結果発表が始まる。

やっぱり赤組が勝って、二人で納得しているうちにカウントダウンが始まって。



「あっ」

「おっ」



除夜の鐘が、鳴り始める。

1月1日、0時ちょうど。新しい年の、はじまり。



「あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとう」



二人の声が同時に重なって、思わず笑った。



「お話したままで年が明けちゃいましたね」

何だか気恥ずかしくて思わずそう言うと、今度は笑い声はなかった。

あれ?と思って先輩の名を呼ぶ。



「真咲先輩・・・?」

「・・・ああ、うん」

「どうしたんですか?」

「いや・・・。お前の去年一番最後に話して、今年一番最初に話した相手は俺なんだなーと思って」

「あ・・・」

「・・・よかった。一番になれて」



先輩は最後にボソッとそう言うと、「じゃあ、また電話する」と言って電話を切ってしまった。

私は先輩の最後の台詞が耳から離れず、携帯を握り締めたまま、動けない。



よかった、なんて。

どういう意味だろう?

思わず頬が熱くなる。



「一番最後で、一番最初・・・」







今夜はしばらく、眠れそうになかった。










あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!
まだ高校在学中のデイジーで。恋心に気付いてない頃くらい?


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