うちにおいで
今日は彼女が家に来る。
誘ったのは僕の方だ。
仮にも未婚の女性を男の部屋に誘うなんて不謹慎かとも思ったが、
どうしても僕の部屋を見て欲しくて・・・誘ってしまった。
後ろめたさのあまり(といっても不埒な事をしようなどとは断じて思ってなどいないぞ!)、
声が裏返ったりしてしまったが、彼女はあまり気にしていない様子で、笑顔で了解してくれた。
誘ったのはいいが・・・さあ、困った。
男の友達でさえ家に呼ぶことはない僕だ。
ましてや女性を呼ぶなんて・・・何を準備したらいいんだろう?
とりあえず、彼女が触れそうな場所はすべて殺菌効果もある消臭スプレーをかけ、
彼女に座ってもらう予定の座布団はカバーを洗濯し天日干ししておいた。
時計が遅れていないかどうかの確認もしたし(1分1秒の遅れも許されないぞ!)、
掃除機だって誘うと決めてから毎日、日課のように朝と夜かけている。
彼女に出す紅茶も吟味してある。お茶菓子もだ。
机の上だって、いつも以上に綺麗に片付けているし・・・あっ、もちろん日記は机の奥深くに隠したぞ!
今までの準備を再度確認し、ようやく安心する。
これで、準備万端のはずだ。
・・・と、セットしていたアラームがなった。
そうか、彼女を迎えに行く時間だな。
用意しておいた上着を羽織り、扉に手をかける。
出る前にもう一度、振り返って最終確認。
頼んだぞ、僕の部屋。
この部屋で、彼女の笑顔が見られるように。
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