流されちゃいそう。





「そういえばおねえ・・・じゃなかった、あかりさん」

最近彼氏に立候補した遊君は、未だに私のことを名前で言うのに慣れない。

今日も言いかけて、「しまった」という顔をする。



「言いにくかったら、前と一緒でいいのに」



私がそう言うと、「そういうわけにはいかないよ!」と憤慨する。



「だって、俺は彼氏なんだからさ。彼女を、おねえちゃん、なんて呼べないよ」

「まだ候補だけどね」

「そーだけどさ!でももうすぐ彼氏になるんだから!」

「大人になったらね」



言うと、ちぇっ、と遊君は不貞腐れたようにそっぽを向く。

そういう仕草をすると、まだまだ子どもだなと思えて可愛らしい。

それでも身長は、本当にぐんぐん伸び続けていて。

一緒に並んでいるとその目線も同じくらいになってきていて。

男の子ってすごいな、って思う。



「・・・まあ、それはいいとして。何を言いかけてたの?」

「よくないよ。言いかけてたのはさ、渡したいものがあって」

「渡したいもの?」

「うん。目、閉じててよ」



言われて、素直に目を閉じる。

しばらくたって、「見ていいよ」との遊君の声で目を開けた。

首にかかった、シンプルな、クロスのネックレス。

私はどちらかというと、色々装飾がついているものは好きじゃないから、一目で気に入った。



「うわあ・・・。可愛い・・・」

「今日、誕生日でしょ?本当は朝一番に渡したかったんだけど」



割と重さのあるそれは、それほど安物には見えない。

まだ中学生なのに、お小遣いをためて買ってくれたのかと思うと、嬉しくて何も言えなくなる。



「あかりさんは首が細いから、似合うと思ったんだ。うん、思ったとおり」



すごく綺麗、と褒めてくれる彼に、ありがとうと呟く。

何かもう・・・困っちゃう。

まだまだ可愛い遊君のはずなのに、かっこよく見えちゃうんだから。

負けちゃいそう。



「お返しはいいから、彼女になってよ?」




・・・もう。

大人になる前に、流されちゃいそうだよ。









遊くんED2を見た直後に。
むしろどうしてその場で彼女にならなかったのかと主人公を問い詰めたい。


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