メモ用紙



もしよかったら、お友達になりませんか?

そう、言葉とともに知らない男性の名前とメールアドレスとが書き添えられたメモ用紙。



「・・・何、これ?」

席を離れていた間、ほんの数分での出来事だった。





「へー、こんな古風なことする奴まだいるのかー」



メモ用紙を見ながら感心したように言う真咲先輩に、私はぷう、とふくれた。

まさかメールする気にもならず、でも捨てる気にもなれず。

結局大学からそのまま先輩の家に来て、証拠品とともに報告した。

ちょっと怖かったのもあるし、やきもちを焼いて欲しかったという気持ちもある。



けれど現在社会人の先輩はネクタイを解きながら感心したように覗き込むばかりで、

やきもちを焼くような気配はない。

何だか空しくなって、クッション片手に先輩のベッドで小さくなった。



「こーら。何拗ねてんだ?」

「・・・別に拗ねてないですもん」



どさり、と先輩が隣に腰掛ける気配。

優しく頭をなでられたが、気付かないふりをして顔を上げなかった。



「それで?メールしてあげた?」

「・・・するわけないじゃない」



お友達、って書いてあるけれど、きっとこれはナンパで。

聴いたこともない名前の知らない人で。

それに私には、先輩がいるのに。



「・・・んー・・・」



先輩は何故かそう唸ると、小さく蹲っている私を包み込むようにして抱きしめた。

思わず顔を上げると、すぐ側に先輩の顔。

そのまま唇を奪われる。

先輩にしては珍しく、貪るような、キス。



「・・・せんぱ」

「何か、複雑な気分」



どうしてと尋ねる前に、私をベッドに倒しながら先輩が苦笑した。



「そいつにさ、これは俺のだぞいいだろって自慢したいような、

 お前に声かけようとしたことに嫉妬してしまうような・・・。

 大人げねーのな、俺」






その後、私が先輩のものだということをちゃんと確認しあって。

もちろんメモ用紙は先輩の手によって消去された。






半分実話。
メモ用紙まだとってあります。何となく。
最後はいつもの真咲主よりは大人目にしてみましたよ。


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