ここにいるよ
先生の家で寝るときは、手を繋いで寝るようにしている。
「先生。手、繋いで?」
布団に入ってきた先生に、手を差し出す。
先生は小さな子供を見るような目で私を見て。
優しい顔でにっこり笑った。
「はい。手を繋いで寝ましょうね」
私が甘えてると思って、嬉しいのかもしれない。
頭を撫でて、「お休みなさい」と囁きあう。
そして、私達は目を閉じる。
疲れているのか、先生はすぐにすうすうと寝てしまう。
ねえ、先生。
本当は私知ってるよ。
先生が時々夜中に目を覚ますこと。
そんな時、いつもすごく汗をかいている事も。
そして、そんな事私の前ではちっとも話さないで、隠そうとしている事も。
本当は夢の中まで行って、大丈夫だよって言ってあげたいけれど。
夢の中に行ってあげることができないから。
だから、こうして手を繋いでいてあげる。
せめて目が覚めたとき、1人じゃないってすぐに分かるように。
ねえ先生。
私はここにいるよ。
卒業後で。若王子先生はベットより布団の人だと思う。
小さい頃のトラウマをこっそり癒してあげようとしている主人公。