正直、一緒に過ごせるなんて、思ってなかった。
イブの夜の奇跡
「わあ・・・っ・・・」
彼女はそう嘆息した後、しばらく何も言わなかった。
綺麗、と唇が動く。それだけで嬉しかった。
クリスマス・イヴ。
本当なら彼女は学校主催のクリスマスパーティーに出ているはずで、俺は店で忙しく働いているはずだった。
店の中に彼女がいるのを見つけたときは、驚きのあまり目を疑ったっけ。
会場まで送るからと、車に乗せて。
イヴにこうして二人でいられるなんて、思いもしなかったよ。
「せっかくのパーティーがなくなったんだから、これくらいはないとな」
そう言うと、「ありがとうございます」とその可愛らしい唇が囁く。
「すっごく・・・綺麗です」
そういうお前の方が綺麗だなんて。
俺がそんな風に思っているなんて、鈍感な彼女は思いもしないんだろう。
夜景も霞んでしまうほど。
一緒に過ごせるなんて思いもしなかった。
無理だからなんて、諦めていたのに。
閉じ込めていた思いが、再び顔を出す。
こんな奇跡が起こるなら、もしかして。
この思いが叶うかもなんて、期待してもいいのだろうか?
「・・・先輩?」
「・・・いや、何でもない。さぁ、会場に向かうか」
イヴの日に起きた奇跡。
一緒に過ごせた、それこそが俺にとって、一番の。
奇跡。