綺麗になった
「あのね、遊くん、教えて欲しいことがあるの」
引っ越してきた当初はいつもそう言って窓越しに声をかけてきた彼女。
最近はまったくと言っていいほど、その窓が開かれることはない。
時折見かける彼女は、出会った頃よりずっと綺麗で。
笑顔が、眩しかった。
「ここでいいよ。ありがとう」
窓の下から聞こえる彼女の声に、思わず遊は窓を開けた。
デートに出かけていたのだと、夕方家まで彼女を送ってくる男の姿で気付く。
男と一緒にいるときの彼女は嬉しそうで、幸せそうで。
となりのお姉ちゃんの幸せを喜ぶべき立場なのに、何故か胸が苦しい。
これ以上見たくなくて、窓のカーテンを閉めた。
ずるずると、その場に座り込む。
「・・・よかったね、おねえちゃん・・・」
力なく呟き、うずくまった。
彼女が綺麗になった理由を、知っている。
それがこんなに悲しいなんて。
ああ。本当に。
貴女は綺麗になりました。
BGMには「なごり雪」をお願いします。
片思い遊くん。恋をして綺麗になっていく初恋の人に対する思いみたいな?