「どうしていつも額なんですか?」
尋ねる彼女に、俺は答える。
「ちょうどいい高さにあるんだよな」
「むー!どうせ小さいですよう」
額を小突きながらそう言うと、彼女は頬をぷくうと膨らませた。
本音をいうとな。
それ以上のだと我慢できそうにないからなんだけど、な。
この距離が、お前にとっても俺にとっても一番安全なんだ。
指
「今はまだ渡せないけど、必ず渡すから」
だから、今はこれで許して、と。
そう言って先輩は、左手の薬指に、優しくキスをした。
頬
4つ年上の先輩は、いつも余裕のある態度で。
それが心強い反面、何だか面白くない時もある。
「む〜〜〜〜〜」
「まあまあ、そう脹れんなって」
だから、人ごみの中。
よしよし、と私の頭をひと撫でして遠ざかっていく背中に飛びついて。
振り向きざまの彼の頬に、ちゅ、と音をたててキスをした。
たまには先輩も、慌ててみせてよ!
項
「わあ、屋台がたくさん出てますよ!!」
そう言って、彼女は急に前を歩き出す。
途端に目に飛び込んできた、白い項。
いつもはセミロングの髪で隠されているその部分は、今日は振袖に合わせてアップにしてあるため露わになっている。
思わず食い入るように見つめてしまい、それから慌てて目を逸らした。
「・・・?先輩?行かないんですか?」
「あー・・・。ちょっと待て」
俺は、自分の首に巻いていたマフラーを、彼女の首に巻きつけた。
「これでよし。さ、いざ初詣に行くとするか!」
不思議そうな彼女に気付かないふりをして、俺は今度こそ歩き出す。
他の男にジロジロ見られてたまるかよ。
唇
「それでね、はるひったらね・・・」
部屋で二人きり、ソファに腰掛けている。
もう少しお話したいな、と上目遣いで見られたときは誘われているのかと思ったが。
彼女はさっきからおしゃべりをするのに忙しい。
よく動くその唇は、新色だと言うピンクのグロスが塗られていて。
まるで誘っているのかと勘違いするくらい魅惑的なのに。
「あのね、先輩、それでね・・・」
肩を抱いてもまったく気付く様子もなく話し続ける彼女に。
俺はそろそろじれったくなり。
「・・・ん・・・」
唇の他の使い方を、教えてやることにした。