勘弁して
今日は楽しみな日であり、そして楽しみでない日でもある。
「真咲せんぱーい!」
満面の笑顔で、店へとやってくる少女。
今日は休みのはずなのに・・・とは敢えて言わない。
だって、今日が何月何日か知っているから。
「おっ、どうした?」
分かってるのに、わざと尋ねてやる。
すると彼女はにこにこと、綺麗にラッピングされた包みを差し出した。
「これ、チョコレートです。手作りなんですけど・・・。受け取ってください!」
昨年同様、真っ赤に充血した目と、目の下の隈。
本当は彼女を抱きしめたかったが、ぐっとこらえて包みだけ受け取った。
「嬉しい。ありがとうな」
そう伝え、頭を撫でると、嬉しそうに笑う。
絶対に食べてくださいねと言い放ち、彼女は去っていった。
何で手作りなんだ。嬉しい・・・けど。
勘違いしそうになるだろ?
自分の立場を、分かっているつもりなのに。
違う存在になれるかもしれないと、思いたくなる。
「勘弁してくれよな・・・」
バレンタインイベントより。本当主人公は罪な子です。
徹夜で手作りチョコなんて・・・誰だって勘違いするよ。