一陣の風



早朝から照り続けている太陽と地面からの熱で、日中のグラウンドは通常の気温よりずっと暑くなる。

止め処なく流れる汗、渇く喉。

揺らめく陽炎に、思わず根をあげそうになる。

休憩の声がかかると、部員は水飲み場へと走った。

頭から水を浴び、ようやく一息つく。

しかし、暑い。

喉を潤そうと水を飲んでも、まだまだ足りないと思う自分がいる。



「志波君」



声と共に、冷たい物が頬へと当てられ、驚いた。

振り向くと、そこには飛び切りの笑顔のマネージャーがいて。



「お疲れ様!そのタオル、気持ちいいでしょ?」



えへへ、と自慢気に渡してきたタオルは、氷水で冷やしたタオルらしい。

暑い日が続いているから作ってきたの、という彼女の手には、大量のタオルの入ったボックスが提げられていて。



「しっかり休憩、とってね〜」



言いながら、次の人へと向かっていく。

全員に配るつもりなのだろう。



「海野」

「は〜い?」

「・・・助かった」

「えへ。どーいたしまして!」



気温は変わらない。

けれど、彼女の通った後は涼しい風が吹いているような気がした。








夏の暑いさなかに思いついたネタだったのですが。もう涼しいよ!というつっこみななしの方向でお願いします。
爽やかマネージャーの話ということで。


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