振り向かない



どこか危なっかしいアイツ。

出かけている時も、気がついたらこけていたり迷子になっていたり誰かに捕まっていたり。

前を歩きながら、「大丈夫だろうか」と思わずにはいられない。

それくらい、後ろを振り向くたびに何か起こっている。

運動神経と反射神経はいいはずなのだが。



「きゃっ」



小さく上がった悲鳴に、またかと溜息。

立ち止まって、振り向いた。



「・・・志波君?」



首を傾げるアイツに、無言で手を差し出す。

案の定ハテナマークを撒き散らし、俺を見上げてきた。



「・・・繋げば、大丈夫だろう」



そう告げて、答えも聞かずに手をとった。

最初からこうしていればよかった。

心配で心配で仕方がないのだ。

おちおちデートも出来やしない。



「ええと・・・ありがとう」



隣で呟くアイツに、俺は顔を上げたまま頷いた。

もう、振り向くことはない。

すぐ隣に、いるのだから。




天然主人公と心配性志波。
付き合う前の二人のデート風景。


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